今日はタイ米を食べました。ぱさぱさしてたのですが、チャーハンだったので美味しかったです。タピオカジャスミンミルクも美味しかったです。
食欲の秋!
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ぱき。ぱき。ぱき。ぱき。
静かな部屋で、唯一聞こえるのは単調な繰り返し。
ぱき。ぱき。ぱくり。ぱき。ぱき。もぐもぐ。
何の音って、バジルが甘栗の殻を剥く音。(と、偶につまみ食い)
バジルの座る机の上には、向かって右側に大量の甘栗があり、左側には既に剥き終えたものがお皿の中に無造作に転がっている。
バジルが甘栗を食べたのは去年が初めてだったが、その時にもとても美味しいものだと感動したものだ。
といって、今日こんなにも大量に甘栗が存在しているのは何もバジルが買って来たわけではなくて、奈々からのもらい物。
買ったり貰ったりと重なってしまって沢山甘栗があるから、ツっくんたちとみんなで食べてね。というのが奈々の伝言で、彼女はちびっ子たちを連れておでかけに行ってしまった。
そこでバジルは、ツナが戻るまでに甘栗の殻を剥いておくことに決めたのだ。
バジルは甘栗の殻剥きが大好きだが、去年門外顧問の仲間たちと食べた時にはみんな殻剥きを面倒臭がって食べなかったので、剥いておいた方がツナも喜ぶだろうかと思ってのこと。
それに今日は、雲雀に修行を付けに来ていたディーノも一緒に遊びに来る筈だ。
だから、と。
バジルはひたすら、甘栗を剥き続ける。偶に、12こに1つくらいはつまみ食いもするけれど。
きっと帰ってきたツナとディーノは、沢山の甘栗にびっくりするだろう。
でも、嫌がりはしない筈。だって、こんなに美味しいのだから。
ディーノはきっと甘栗の殻剥きも苦手だろうから、食べやすくなっていて喜ぶだろう。
バジルのことを良く、献身的過ぎるとか、貧欲だとか、多分良い意味で言ってくれる人は沢山居るけれど
実はバジルだって、そこまで人の為だけにいろんなことをやっているわけじゃあない。
だから今日のこの殻剥きだって、ツナやディーノがきっと喜んでくれるのが楽しみで、やっているのだ。喜んでくれる姿が見たくて、やっているだけのこと。
そして更に言えば
バジルは多分、人が彼に対して抱くよりもう少しだけ打算的で。
感謝してくれたら嬉しいなぁ。なんて、ちゃんと思っていたりもする。
勿論それにしたって他の人から言わせれば、貧欲だなぁと笑うのかもしれないけれど。
ぱき。ぱき。ぱき。
もうすぐ帰ってくるだろう2人が、美味しそうに甘栗を食べてくれる姿を想像しながら、バジルは甘栗の殻を剥き続ける。
それはディーノとツナが知らない、バジルの幸せな時間。
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甘栗とバジルでした。帰ってきたツナはあまりの量の甘栗に唖然としますが、バジルがあまりに嬉しそうなので突っ込めず。
でも美味しいので3人で仲良く食べます。
お次は・・・「季節の変わり目」で、お願いします!
うちの会社はまだ蝉が鳴いていて蚊取り線香も焚いているので完全に季節変わり損ねていますが・・・。
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水辺 ツナバジ
少し涼んでいこうよ、とツナが足を止めたのは近所の公園だった。
こんなところがあるんですね、と木漏れ日の中を歩くバジルが物珍しそうにしている様子に、なんとなくツナは不甲斐なく思う。考えればわかりそうなものだった。部屋でゲームなんかしているより、余程バジルは喜んだだろうに。もっと、連れて来てあげれば良かった。
ジジッ、と蝉が逃げる。この頃になると、なんとなく彼らの鳴き声には迫るものがあるような気がする。
もうすぐ蝉も居なくなる。
「・・・ここは、公園ですよね?」
バジルに聞かれ、その場凌ぎでも会話を続けたかったのに良い言葉が出てこない。思えば、小さい頃から何度となく来ていたはずの公園なのに、その名前すら知らない。
「・・・水の公園、って呼んでた。今思えばちゃっちい公園なんだよね。遊具も無いし。」
環境整備か何かが目的なのか、子どもが駆け回って遊ぶ公園というより大人が散歩する為にあるような公園。それも、余所行きの綺麗な舗装がされていない為に散歩する人も少ない。昔よりは大人になった今から思えば、淋しい公園だ。
「良く来られるのですか?」
「昔はね。・・・遊び道具はなかったけど・・・ほら、向こうに池があるでしょ。あの岩の下とかにザリガニがいて・・・そういうのとったりしてた。」
指差すと、バジルがその先を見つめる。何の面白味も無い池なのに、なんだか、申し訳なくもあり嬉しくもある。
2人でそんな取りとめのない話をしながら、適当な場所で腰を降ろした。
悪ふざけのように、靴と靴下を脱ぐと足首までを水につける。
「ぬるい。」
折角冷たいだろうかと思って、綺麗な水のある人工池の方まで来たのに。と、ツナが愚痴るとバジルが笑った。そして、同じように足を水につける。
「・・・でも、気持ち良いですね。」
風が、木々を揺らす。緑の葉が、ざわざわと音を立てて。時折、激しい太陽の光を漏らす。
葉の不規則な影がバジルの白い肌の上に落ちていた。
その影を辿ると、伏せた睫に行き会う。
バジルは視線に応えることもなく、じ・・・と視線を落としている。水の中の、つま先へ。
バジルのその遠い横顔を見て、ツナは喉を鳴らした。恐怖のような、泣きたいような気持ちだった。
夏が、終わる。もう、間もなく。
今、肌を焼く太陽の熱も、喧しい蝉の声も、緑の葉も、ぬるい水も、何もかもがもうすぐなくなる。
夏なんて短いものだ。高々2ヶ月しかない。
そして夏が終われば学校が始まる。いつもの日常に戻る。
バジルも、イタリアへ帰る。
元々家光の帰省に巻き込まれてついてきただけだった。だから、これは束の間の日。
「・・・バジルくん、後でアイス買って帰ろっか。」
「良いですね、きっと美味しいですよ。」
今日は暑いですから。と、笑うバジルの声にほっとする。
こんな暑さが続いて、彼が気付かなければ良い。迫り来る夏のお終いに、気付かないでいてくれれば良い。なんて、馬鹿げた話。
夏はもう終わるのだ。だから、こんなにも自分は切ないのに。
ぱしゃん。
バジルが、右足を上げた。
つま先から、水が伝う。もう一度水の中に沈めると、水面が揺れて白い光を跳ね返してきた。
どうか、忘れないでいて。
ツナは、言葉に出来ないままに思う。願う。
バジルとツナの世界は遠い。イタリアと日本だとか、そんなものじゃない。そんな意味じゃなくて、彼は、彼の世界は自分とは違う。
だから、今束の間の夏休みが終われば
彼の世界は自分の知らないものへ変わる。その世界のバジルの姿をツナは知らない。
ただ
この水面の
揺ら揺ら、輝く太陽の光を、どうか忘れないで。
2人並んで水辺に座る夏の日を、忘れないでいて、欲しい。
「・・・帰ろっか、バジルくん。」
もうすぐ君は、オレの知らない世界に帰ってしまうけど。
でも、どうか、・・・思い出して。
君の為の世界は、オレの隣にもあることを。この、日本にだっていつだって逃げてくれば良いってことを。
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不完全燃焼・・・。気持ち、チェンジザワールドのツナ視点でした。
夏休みのない社会人には夏なんてあっという間です。
「地下鉄」の方で行かせて頂きます!
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地下鉄 ディノバジ
「・・・・・」
ロマーリオから、何とも平凡で、何気ない風に伝えられた言葉を仕事片手にぼんやり聞いて、ディーノはあんぐりと口を開けてしまった。
何故、この優秀な部下はこんな一大事を、そんなにも普通に普通に、口にするのか。
「・・・何だって?」
「いや、だからバジルが遅れるってよ。何でも地下鉄で乗り間違えたらしい。今路線図見ながら電車捜してるから、遅くなると思いますが・・・ってな連絡が」
「それ、一大事じゃねぇかよ」
まだぼんやりと、珈琲なんか淹れながら報告しているロマーリオに突っ込む。
パソコン画面に浮かぶ仕事の話なんて、この時点でもうアウトオブ眼中だ。
「何でだよ。別にバジルに頼んだのは単なるおつかい程度のもんだし、そこまで遅れたって困らないぜ?」
日本滞在期間が延びたバジルは、同じく仕事の関係でまだ日本を離れないキャバッローネの元で修行と題してお手伝いをしている。
今日も、ある書類を受け取りに東京の方まで行ってきて欲しいというおつかいを頼んだのだが・・・それが、遅れると言うのだ。
確かに書類は遅れても問題無い。
別に重要機密というわけでもなし、単なる資料なのでもし万一があってもまた取りに行けば良いのだ。
しかし、問題はそんなところではない。
「・・・お前な、バジルから連絡受けたんだろ?」
「あぁ」
「バジル、何つってたんだよ」
「あ?・・・だから、電車乗り間違えて今路線図見て探してるって・・・」
「・・・それ、迷子じゃねぇかよ!」
「・・・そうか?」
きょとん、としている部下に溜め息をついて、パソコンはもうシャットダウン。
「お前、日本の東京の電車なんて、あれだろ、ダンジョン並みの複雑さだってこの間何かで読んだぜ?」
「あー、らしいな。」
「地下鉄なんざ更に解り難いらしいし。・・・で、それでバジルは乗り間違えて今路線図見て探してるって言ったんだろ。乗り間違えたから、戻りますじゃなくって。」
「・・・そういや、そうだな・・・」
「アイツ今、迷子なんだよ。」
「・・・何か、口調が確りしてるから気付かなかったな・・・悪いボス、今すぐ探しに行ってくる。」
自分が同じ事を言えばすぐに気付いたのだろうに、と苦笑しながらディーノはジャケットを羽織った。
「いや、オレも行く。・・・でも、すれ違いになりそうだな・・・」
「ダンジョンだしな。・・・オレもさすがに地下鉄には詳しく無いしな・・・。」
ふぅ、と2人で息を吐いて。
ディーノは内線でボスの指令を一つ。
「・・・オレだ。悪いけど、手の空いてる奴何十人か今から外に出てくれ。」
・・・と、キャバッローネ仮本部でそんなやりとりが行われている頃。
バジルは東京駅を彷徨っていた。
最早自分の居る位置すらわからず、途方に暮れてしまう。
(・・・やはり親方様や沢田殿の日本は凄い国です。こんなに複雑な駅と電車を皆さん使いこなしているなんて・・・)
ひらひらふわふわした女の子たちだって、バジルの前を颯爽と、迷う様子もなく進んでいく。
それにちょっと凹みながら、バジルも実は人並みには持ち合わせているプライドでもって迷子には見られたくなく、何食わぬ顔で進みながら案内板を探す。
が、その案内板からしてバジルには解読困難なのだ。
実はバジルは、日本語の読み書きはそんなに得意ではない。寧ろ書きは殆ど出来ない。漢字なんて・・・
そんなわけで、もうこれはしらみつぶしにでも全ての通路を歩いて見つけ出すしかないと腹に決めて、バジルはより一層わけのわからない方面へと迷い無く進んで行ってしまう。
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、というのは親方様に教えてもらった日本の言葉だったが、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥・・・なんて言葉もあった事はすっかり忘れていた。
と、言うよりバジルは人を頼る事が苦手だ。
遠慮がち、と言うより不器用というかプライドが高いというか、何というか。
バジルは兎に角自分と人との間に溝を置きたがる癖があるので、基本的に人に弱音は吐かない、吐けないのだ。
見ず知らずの人間になんて尚更。
本当は、・・・ロマーリオに正直に言おうかとも思ったのだけれど。迷子になりました、と。
でも、そんな事微塵も思っていないロマーリオにそれを言うのは憚られたし、一人前に扱われている以上やっぱりそんな甘えを口に出すことは出来なかった。
頑張って探そう。
自分の足で何とかしようと進んでいたバジルの前で、先ほどまでとは少々違ったざわめきが聞こえる。
何やら不安がって逃げてくる人も居る様子で、一体何があるのかと覗いた先には・・・
「・・・え!?」
黒スーツを身に纏ったイタリアンマフィアが、それこそぞろぞろとあちらこちら分散して歩いていた。
「・・・ボス、居ましたぜ!!」
「ボス、こちらです!!」
そしてバジルと目が合った瞬間、大声で叫ぶ。ありがたいのはイタリア語なことで、これが日本語だったらもうバジルは恥ずかしくて気が狂うところだった。
間もなく走ってきたバジルは、大勢の部下の中なので転ぶこともなく颯爽と現れて・・・バジルの顔を見ると、安心したように深く息を吐いた。
「・・・良かった。ったく、心配すんだろ。」
「・・・あ、あの、ディーノ殿・・・これは・・・」
「お前を捜しに来たんだよ。」
迷子になったんだろ。と、はっきり口にするディーノにバジルは驚く。
「え?」
「違うのか?」
「・・・いえ、・・・あの・・・すみません、電車がわからなくなってしまって・・・」
ぽつりぽつり、正直に漏らすバジルに苦笑して、ディーノは小さな恋人の身体をぎゅっと抱き寄せた。
「・・・だったらちゃんとそう言わねーと、ロマーリオだってわかんねぇだろ。」
「・・・じゃあ、何でここに・・・」
「オレはお前が甘えないの、知ってるからな。」
でも、こういう時はちゃんと言えよ。なんて、冗談のように軽く小突いて。
今度はどこかへ行ってしまわないようにと、肩を抱く腕の逞しさにバジルは頬を赤く染める。
「・・・ま、ちょっと大袈裟になっちまったけどな。」
見れば一体何十人連れて来たのか、そろそろ警察でも呼ばれそうな状態に苦笑するディーノに、漸くバジルも同じような笑顔を返した。
この、大袈裟なまでの優しさがとても嬉しかった。なんて、とてもバジルの性格では言えないのだけれど。
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因みに通報されなかったのは、ドラマの撮影か何かだと思われたからです。
フミヤさん、お題ありがとうございましたvv
お次のお題は・・・「お金」で、お願いします★
例えば青い空だって、カーテンを閉めてしまえば見えなくなるでしょう?
そんなもので、気分次第でどんな良い天気だって鬱々として感じることもあるし、例え曇天の空であっても大変晴れやかな気分になることもあるものです。
だから、だから。
世界がその目に映るまま、明日も同じようにあるなんて限らない。
でも、それをまだあまり良く理解されて居られない、おぬしが羨ましいとも思うのです。
Change the World:ツナバジ
「喉渇いちゃった・・・ジュースでも持ってくるけど、バジルくん炭酸平気だっけ?」
蝉の声がじわじわ、響く夏の日。
薄い生地のシャツをぱたぱたとはためかせて、ツナが苦笑するのにバジルはゆるゆると首を横に振った。
「拙者の事はお気になさらず。」
「飲める?飲めない?」
しかしながら、修行の日々ですっかりバジルの扱いになれたツナはものともしない。
2つの道だけを用意して、そして意図した返事がもらえるとにこりと笑って階下へ降りていった。
軽い足音が響く。
どこか遠くで、子供の遊んでいる声がする。車の走る音がする。風が止まっている気配がする。じわ、じわ、と
夏の昼下がりの
バジルには馴染みのない空気が、けれどどうしてか懐かしいような、落ち着くような、気がするのは
きっとこの部屋だからだろう。
机の上には、ツナがさっきから投げ出しては拾ってを繰り返している宿題。
日本語が書けないバジルは、大して役に立たないながらも傍に居る。
もうあと僅か、気合を入れて頑張れば終わるのだろう数ページ。
しかし果たして、虫の鳴く頃合までに終わるかどうか?
全てはツナのやる気次第なのだが、ジュースを入れにいったところを見ると今日はもう難しいかもしれない。元より、今日で終わらせなければならない理由などないのだから尚の事。
その内またぱたぱたと足音がして、ツナが足でドアを開けてお盆を持って入ってきた。
水滴のついたグラスをテーブルに置く。
触れると、冷たくて気持ちが良かった。今更、喉が渇いていたのだと気付く。
「あ」
ツナが、そっとバジルの腕を撫でる。
僅かに水滴で湿った指の温さが少しだけ不快ではあったが、それがまた何とも言い難い安堵感を感じさせた。バジルはその、気持ちの名前を知らないけれど。
「蚊だ。」
「え?」
「蚊に刺されてる。・・・嫌だなぁ、部屋に入ってきたんだ。夜は蚊取り線香炊かないとね。」
「・・・はぁ。」
「痒くない?」
言われれば、そんな気もしてくる。
ついつい伸びた逆の手を、ツナが軽くぺしりと叩いた。
「駄目だよ、掻いたら。・・・薬、出しておいてもらうから。」
ツナがグラスに口を付ける。
すぐ近くに蝉が止まったようで、声が大きくなった。じりじり、暑さが増す。
夏の声、気配、そして
二人の部屋。
放置した宿題と、水滴を纏うグラス、冷たいジュース。
歯痒い蚊刺されの赤。
何ていう平穏だろうか、と、バジルは思った。
居心地が良い。だからこそ、落ち着かない。自分には。
けれど彼にはこれが普通なのだろう。それは、何と幸せなことだろうか。
彼はまだ知らない。
こんな日々がどんなに貴重なものか。
これからどれだけ遠ざかっていく日々なのか。まだ、知らない。
それが可哀想でもあり、羨ましくもある。
しかしながらそんなものを上手く説明できる程バジルは言葉が達者ではなかった。
「・・・残りの宿題、頑張りましょうね。」
結果、何気ない続きを。
単なる夏の、続きを口にする。
嫌そうに顔を顰めてみせるツナに笑って、それからそっと
例えどんなものになろうとも
今後変わり行く目の前の少年の世界が、彼にとって少しでも幸せの多いものであることを願った。
こんな日々は、終ぞ繰り返されないだろうから。
だから、どうか、
それがどんな世界であっても
彼の笑顔だけは、潰えないように。
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ツナバジ・・・と、言い張ります。
暗めで失礼致しました。
次のお題は・・・「添い寝」で、お願いしますっ
バジリ庵も3周目ですね!もうすぐバジルが20人。(1回1バジルで換算)
この調子で行くと・・・
バジル100人も夢じゃない!
100人のバジルが富士山でおにぎりを食べるのも!
100人バジルが居たら、100個おにぎりが必要なので・・・何度も何度も炊飯器でご飯を炊く必要もあって、きっとバジルは夜から当番でご飯を炊いておにぎりを作って、100人で並んで富士山登頂に・・・。
何の話かわからなくなったので、お題にいきます!
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それは途方も無く広い、遠い、海のような距離を隔てて
「言葉」 スクバジ
「・・・ふぁ」
小さな欠伸を立てると、それ見たことかと言わんばかりにスクアーロが眉を顰める。
それはいつものようなからかいの意を含んでいるようには見えなくて、真面目なその顔が一層の恥ずかしさと情けなさを誘う。
バジルは、それがスクアーロだからと言う理由以上に不必要な悪意をむき出しにして、唇を噛み締めた。
まるきり、子供の八つ当たり。
スクアーロはそれっきり、何も言わずに視線を手にしていた新聞に戻した。
何時の間にそんなものを買っていたのかと、バジルは目を丸くする。
スクアーロとバジルがこの部屋に訪れたのは、一昨日の夜。
勿論、仕事の上でだ。
スクアーロの監視に自分が宛がわれたのか、自分の補佐にスクアーロが宛がわれたのか、いまいち理由は定かではなかったが、兎に角「行け」と言われれば否とは言えない性分だ。
すぐに支度を終えて、スクアーロと合流して飛行機に乗った。
目的地は、バジルの訪れたことの無い国。
と言って、別に箱入り息子でも在るまいし国外への仕事なら経験がある。
空港でもたもたするようなみっともない真似は見せなかったし、仕事だって・・・勿論スクアーロに武力で敵うことはなかったが、バジルはバジルなりに、任務をきちんと全うできた。
バジルにとって面白くなかったのはその後。
今回、ボンゴレと協力関係にあったファミリーから所謂接待というものを受けたのだ。
スクアーロもバジルもそんなものは好きでも無かったし、どうせまだイタリアへ帰れないのなら部屋でのんびりとしている方が幾分もマシだったのだが、それでもファミリーと協力者の交友関係を勝手に断ち切るわけにはいかない。
彼らから誘いを受けるなんていうことは予想もしていなかったが、厄介な問題を解決してくれたスクアーロとバジルに対し、彼らは非常に友好的に対応してくれたのだ。大方余程問題に頭を痛めていたに違いない。
その感激っぷりは凄まじく、殊、スクアーロの剣術には見事だ素晴らしいと賞賛の嵐だった。
「まだ時間があるだろ、寝てろ。」
「・・・」
余裕の表情で、珈琲を啜る姿が憎い。
スクアーロとバジルが部屋へ帰ってきたのは明け方の2時。
それからバジルは、殆ど眠る事が出来なかった。
悔しかったのだ。
「・・・オレは何も言ってねぇだろうが」
「・・・知ってます。」
飲み会の騒ぎの間、バジルは常にスクアーロの背中の裏に居た。
何故か?
「・・・拙者は、子供扱いされていましたか・・・?」
スクアーロの剣術に敵わなかったのが悔しかったのではない。
言葉が、わからなかったのだ。
異国の地で、彼らはバジルがその土地の言葉を知らないと解ると別の言葉も使ってくれた。
しかし、バジルには教養が無い。
幼児が言葉を覚えるのと、成長してから言語を覚えるのとでは訳が違う。
バジルは言葉以外にも、多くの必要なことだけを急速度で学んでいった。
その分、抜け落ちているところが多いのだ。
言葉も、その内の一つ。
「・・・そりゃあ、子供だからな。」
「・・・」
今までそれを、こんなにも悔しく思ったことは無かった。
勿論、向上心の強いバジルだからこのままで良いと思っていたわけではない。
けれど、家光もディーノもゆっくり覚えていけば良いと言ってくれた。
必要なこと、命に関わることだけを先ずは覚えれば良いのだからと。
それでも今回は、言葉を喋れないこと。自分が無知なことが酷く恥ずかしく思えた。悔しかった。
スクアーロは、あれで博識なのだ。
彼はバジルの知らない言語を、いとも容易く操って見せた。
今読んでいる新聞だって、バジルには絵文字にすら見えないものなのに。
ヴァリアーは何ヶ国語も習得しているのだと聞いたことはあったが、実際に目の当たりにするまで何とも思っていなかった。
けれど。
「・・・悔しいのか?」
「・・・悔しいです。」
武力でも敵わない。
そして、知識でも。彼は自分の上を行く。
8年の経験の差、そして学んできたことの差を痛い程に見せ付けられる。
ディーノのように、年上らしく自分に振舞うことなど殆ど無い気侭な男なのに。
それで居てやはり如何しようもなく、彼は年上なのだ。大人なのだ、立派な。
バジルの知らないことを沢山知っていて、彼はきっとどんな国でも暮らしていける。
知っている言葉の数だけ、多くの世界を見てきたのだろう。
バジルの知っている世界は、ほんの小さなものに過ぎない。
とても、敵う筈も無い。
悔しくて、やりきれなくてバジルは枕に顔を埋めた。
スクアーロは笑ったようだったが、顔を上げられなかったのでバジルには解らない。
ベッドで枕を抱える自分と
珈琲片手に新聞を読む彼と
そこには、とてもとても大きな距離が存在している。
手を伸ばせば届く癖に、実際そう近くにはいないのだ、彼は。
後数時間でこの国を発つだろう。
その手続きすら、多分スクアーロがしてくれるのだろうと思うとバジルは居た堪れなさに目頭が熱くなった。
彼の周りの誰一人として、大人になれと急かしたりはしないけれど。
でも、何よりも誰よりも、スクアーロの背中に隠れる自分だけは嫌だった。
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テーマからもスクバジからもどんどん離れていった気がしないでもないですが、スクバジです!
バジルは実は多少頭が悪いくらいでも可愛いと思います・・・vv